にこ~るブログ
2021.02.12
『レインツリーの国』

 今回のにこ~るブログは、『図書館内乱』(KADOKAWA/角川書店)に登場する小説という設定の小説。有川浩(現、有川ひろ)作、『レインツリーの国』(新潮社)をご紹介いたします。『図書館内乱』につきましてはまたいつかお話いたします。

フリー写真素材ぱくたそ

 

『レインツリーの国』あらすじ

 主人公の「伸」は、自分の好きな小説の感想が書かれているウェブサイト「レインツリーの国」を見つける。そして、そのサイトの管理人「ひとみ」とメールを通じて仲良くなる。

 その後、2人はデートをすることになるのだが、「ひとみ」が初めは「会ってみたい」と言っているにもかかわらず直接会うことを渋ったり、実際に会ってもコミュニケーションに行き違いが生じたりして、2人の間がギクシャクしてしまう。しかし、初デートの終盤、「伸」は「ひとみ」が、聴覚障がいであることを知り……

 

・新潮社『レインツリーの国』紹介ページ https://www.shinchosha.co.jp/book/127631/

 

 手話のできない中途失聴の女性が登場する本書。単行本が2006年に出版されている書籍なので、情報が若干古い部分もありますが、当事者が直面している問題は現在も続いていると思います。

 

 作者の有川氏は、あとがきにてこのように述べています。

「『レインツリーの国』は別に何かを誰かに訴えたいとかそうしたことではありません。訴えるべくは当事者の方が訴えておられます。…(中略)…参考文献の体験談などを拝読し、自分でもドキッとすることがたくさんありました。…(中略)…そんな「自分もやっているかもしれない」ということを、自戒を籠めつつ積極的にエピソードに取り入れたことを思い出します。」

 補聴器について、映画の字幕について、後ろから近づいてくる音についてなど聴覚障がいにまつわる事が本編中に散りばめられています。そして、「きこえる事が当たり前」であるが故の失敗を、本作の主人公はしてしまっています。読んでいると、「こういうことを自分もやってしまっているかもしれない……」などと思わされます。

 巻末にある参考文献に、中途失聴や難聴に関する書籍も載っていますので、興味のある方はそちらも是非手に取ってみてください。

 

 また、有川氏は、同じくあとがきにて、このようにもおっしゃっています。

「私が書きたかったのは『障害者の話』ではなく、『恋の話』です。ただヒロインが聴覚のハンデを持っているだけの。聴覚障害は本書の恋人たちにとって歩み寄るべき意識違いの一つであって、それ以上でもそれ以下でもない。ヒロインは等身大の女の子であってほしい。(原文ママ)」

 

 有川氏がおっしゃるように、本書は「好きになった人が、聴覚障がいだった」というお話の恋愛小説です。主人公「伸」だけでなく、ヒロイン「ひとみ」もやり取りが非常に人間くさいです。好きな本の感想を生き生きと語り合ったり、喧嘩したり、悩んだり……『レインツリーの国』は、障がいの有無関係なく行なわれる人間味のあるやり取りや、登場人物の感情の揺れも見どころの一つだと思います。

恋愛小説が好きな方で、本書を未読の方は、是非一度読んでみてくださいね。