にこ~るブログ
2025.04.11
盲ろう者のコミュニケーション手段

 4月になりました。中野の事務所前の桜並木は、少し葉桜になり始めてきて、桜吹雪が綺麗です。昼と夜の気温差が激しいので、皆様もお体壊さないようにお気を付けください。

 さて、今回のにこ~るブログは、盲ろう者のコミュニケーション手段についてお話いたします。

 

【盲ろう者とは】

 盲ろう者とは、「視覚と聴覚の両方に障がいを併せ持つ人」のことです。盲ろう者と言えば、ヘレン・ケラー(※1)を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、「盲ろう者」と一口に言っても、その障がいの状態や程度は様々です。見え方ときこえ方の組み合わせによって以下の4つのタイプに大別されます。

・全く見えない・全くきこえない状態の「全盲ろう」

・見えにくく、全くきこえない状態の「弱視ろう」

・全く見えない・きこえにくい状態の「全盲難聴」

・見えにくく、きこえにくい状態の「弱視難聴」

 

 また、盲ろうになるまでの経緯が当事者によって異なり、大きく分けるとこちらも4つのタイプに分かれます。

・盲(視覚障がい)から聴覚障がいを伴った「盲ベース盲ろう」

・ろう(聴覚障がい)から視覚障がいを伴った「ろうベース盲ろう」

・先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障がいのある「先天(早期)盲ろう」

・成人期以後に視覚と聴覚の障がいになった「後天(後期)盲ろう」

 

(※1)ヘレン・ケラー……アメリカの教育家・社会福祉活動家・著作家。世界各地を訪問し、障がい者の教育・福祉の発展に尽くした。(ヘレンケラーって何をした人?? 熊本大学 本吉研究室 参照)

 

【盲ろう者のコミュニケーション手段】

 先述の通り、盲ろう者は見え方・きこえ方(障がい状況)、盲ろうになるまでの経緯(受容時期)が人によって異なります。そのため、一人ひとりが取るコミュニケーション手段が異なってきます。

 当事者が持っている、触る・見る・きく感覚を使ってコミュニケーションを取ります。

 

・触覚を使ったコミュニケーション手段

〇触手話…話し手が手話を表し、盲ろう者がその手に触れて伝える方法

指点字…盲ろう者の指を点字タイプライター6つのキーに見立てて、左右の人差し指から薬指までの6指に直接打つ方法

〇手書き文字…盲ろう者の手のひらに指先などでひらがなやカタカナ、漢字などを書いて言葉を伝える方法

点字筆記…点字の触読が可能な盲ろう者は、点字を読み取るというコミュニケーションを取る方法があります。 

〇指文字(ローマ字式)…アメリカ式アルファベット指文字をローマ字表記で表し、盲ろう者の手に触らせて伝える方法

 

・触覚と視覚を使ったコミュニケーション手段

指文字(日本語式)…ろう者・難聴者・中途失聴者の間で広く使われている日本語式指文字を、盲ろう者は残った視力で見たり触れたりすることで読み取ります

 

・視覚を使ったコミュニケーション手段

〇弱視手話…「視力が低下している」「視野が狭い」といった視覚障がいの状態に合わせ、話し手との距離や手を動かす幅を調整することによって、手話を目で読み取る方法

〇筆談(文字筆記)…視覚活用が可能な盲ろう者に対して、文字を書くなどして伝える方法。紙や筆談ボードに書いたり、パソコンやタブレットに文字を入力したりする

 

・聴覚を使ったコミュニケーション手段

〇音声言語で会話…全盲難聴や弱視難聴の盲ろう者に対して、耳元や補聴器のマイクなどに向かって話す方法

 

 主に上記のコミュニケーション手段がありますが、多くの盲ろう者の方は複数の手段を併用しています。

 

【盲ろう者と話すときは】

 「手話ができないから」と遠慮せずに、積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。特別なコミュニケーション手段を知らなくても、手のひらに文字を書くだけで会話できる方も少なくありません。

 

●自分の名前を伝える

盲ろう者はすぐそばに人がいてもわかりません。そっと手や肩に触れてから名前を伝えましょう。初めて会う盲ろう者には、性別や大まかな年齢なども伝えると、盲ろう者はより安心感を持って会話することができます。

 

●周囲の状況を伝える

現在いる場所の状況(広さ、形、何があるかなど)を伝えてあげてください。例えば部屋に入った時には、「縦長のロの字形に机が並んでいます」、「入口と反対側の壁側にホワイトボードがあります」などと具体的に状況を伝えましょう。

 

●話し始めたらいつも触れておく

突然手を離されると盲ろう者は情報を得る手段を無くして不安になってしまいます。常にどこかに触れているようにしましょう。

 

●あいづちを打つ

しぐさで「あいづち」や「うなずき」などをしても盲ろう者にとっては確認しにくいので、手や肩を軽くたたくなど、代わりの方法で「あいづち」を打つようにしましょう。

 

●話が通じているか常に確認する

読み取り違いや聞き違いがあると、話が伝わらなかったり誤解を招いたりします。盲ろう者の表情や発言内容などを確認し、正確に伝わっていないと思われた場合は、最初から言い直したり、さらに説明を加えるなどしましょう。

 

●その場から離れるときは、そのことを伝える

何も言わずに突然その場を離れると、盲ろう者は不安になってしまいます。「トイレに行くので、5分ほどここで待っていてください」などと、離れる理由と時間を伝えてからその場を離れましょう。その際は、壁や柱などに手を触れさせるなどして、空間に孤立させないようにしましょう。

 

●(指点字を使って)話をするときは、通常の会話のように声を出す。

声を出さずに二人で話していると、周囲の人には会話の内容が伝わらず、話題を共有できません。音声での発話ができる人は、原則として声を出しながら指点字を打ちましょう。その方が指点字も自然に打てます。

 

【参考文献】

・盲ろう者と触手話 | 国立リハビリテーションセンター

http://www.rehab.go.jp/application/files/5715/2039/6500/07_17_01_PDF1.1MB.pdf

・手から手へ 心から心へ東京盲ろう者友の会 ホームページ

http://www.tokyo-db.or.jp/

・日本のヘレン・ケラーを支援する会~ 社会福祉法人全国盲ろう者協会

https://www.jdba.or.jp/index.html

・視覚と聴覚の重複(盲ろう)障がいについて(13 広げよう「心のバリアフリー」 | 平塚市) https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/common/200122481.pdf

・盲ろう者向け通訳 指点字練習帳♪ http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~macky/yubi.html

・点字を読んでみよう | 日本点字委員会(日点委)

http://www.braille.jp/topics/yonndemiyo.html

・人権情報誌「TOKYO人権」バックナンバー第44号(平成21121日発行) https://www.tokyo-jinken.or.jp/uploaded/attachment/1011.pdf

・『指点字ガイドブック 盲ろう者と心をつなぐ』(認定NPO法人東京盲ろう者友の会編著、福島智監修、読書工房、2012年)

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