
- 2024.05.24
- 聴覚情報処理障害(APD)
-
今回のにこ~るブログは、聴覚情報処理障害についてお話いたします。
【聴覚情報処理障害(APD)とは?】
聴覚情報処理障害は、聴力検査では「難聴ではない」という結果が出るにも関わらず、うるさい場所や、複数人数の会話、電話、接客、授業等、日常生活の色々な場面で聞き取りにくさ(聞いた言葉の内容が理解しづらい)が生ずる状態を言います。英語ではAuditory Processing Disorderと書き、APDと略します(以下「APD」と表記いたします)。
海外では「聞き取り困難(症)」を意味する「Listening difficulties」からLiDという言葉が主流になっているようです。
APDのタイプには大きく分けると4つあります。
1, 脳損傷タイプ (脳梗塞・脳出血等で、中枢聴覚系の途中にダメージを受けてしまったことで聞き取りにくさが生じている)
2, 発達障害タイプ(ADHD、ASDの方にこの特性が表れやすい)
3, 認知的な偏り(不注意・記憶力が弱い)タイプ
4, 心理的な問題タイプ (人間関係、環境の変化等によるストレスで聞き取りにくさが生じている)
上記4つが、1つだけの人もいれば、複数のタイプが混ざり合って聞き取りづらさが表れている人もいるそうです。
現時点で投薬等の治療法も無いため、APDと診断された方は、ご自身で工夫されて聞き取りと付き合っているようです。
【聞き取りにくくなる条件】
例えば下記のような条件が重なると、APDの特性のある当事者は、言葉が聞き取りにくくなります。※人によって苦手とする場面が異なります。
・騒音が大きな場所で、当事者本人に話しかけた時。
・2人以上の人が同時に、当事者本人に話しかけた時。
・当事者本人の横や後ろから声をかけた時。
・当事者本人が電話やPCなどの機械を通した声を聞いた時。
・当事者本人が長時間にわたる話を聞く時。
・話し手が早口の時。
・話し手の声が小さい、はっきりしない時。
【対応のポイント】
上記の条件を踏まえ、APDの特性のある方には、(特に学校教育や会議の場面において)以下の点に話し手が気を付けて対応すると、言葉が聞き取りやすくなり、話の内容も理解しやすくなります。
・雑音を伴わない場所に移動する。
・文字、図、具体物を見せながら説明する。
・聞き手の注意を話し手に向けてから話す。
・一度に多くの指示を出さず、シンプルな言葉で伝える。
・伝えた内容を本人に反復させ、再確認させる。
・話が長時間にわたる場合は、こまめに休憩を挟む。
上記の方法は、特性の有無にかかわらず、分かりやすく相手に伝える方法として有効なのではないかと思います。
また、APDマーク公式サイトでは、APDの認知度を高めるために、当事者の声や彼らに役立つ情報がまとめられています。可愛らしいコアラがデザインされたAPDマークの配布もあるので、当事者の方は利用規約をご確認の上、ご活用ください。
APDやLiDについてもっと知りたい方は、下記の参考資料もご参照ください。
【参考資料】
・『耳の不自由な人をよく知る本 ビジュアルブック∞障害のある人とともに生きる2』(大沼 直紀 監、障害のある人とともに生きる本 編集委員会 編著、公益財団法人 共用品推進機構 協力、2022年 P.48)
・APDマーク公式サイト|”聞き取れない”と生きよう。https://apd-mark.com/index.html
・『隣の聞き取れないひと APD/LiDをめぐる聴き取りの記録』(五十嵐 大 著、翔泳社 2022年)https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798175324
・聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD) 当事者ニーズに基づいた聴覚情報処理障害の診断と支援の手引きの開発 AMED研究プロジェクト公式ホームページ https://apd.amed365.jp/