- 2025.12.03
- ギャローデット大学
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次回(2029年)の夏季デフリンピックの開催地がギリシャ(アテネ)に決定いたしました。(夏季デフリンピック、次はアテネ 東京の4年後 | NEWSjpより https://news.jp/i/1367752648056471645?c=1179248089549373591)
4年後も待ち遠しいですが、その前に2027年にはオーストリア(インスブルック)にて冬季デフリンピックが開催されます(2027年1月15日~1月24日)。こちらも楽しみですね!(Winter Deaflympics 2027 | ICSDより https://www.deaflympics.com/events/507 英文)
さて、今回のにこ~るブログは、ギャローデット大学についてお話いたします。
ギャローデット大学は、アメリカ合衆国ワシントンD.C.所在のアメリカ手話(ASL)と書記英語を学内の公用語とする文系総合大学です。「ろう者のための大学」と謳われていますが、大学内での使用言語はASLと書記英語とし、それらを用いて学問を追求する大学であることから、ろう・難聴者だけではなくASLで難なくコミュニケーションができる聴者にも門戸が開かれています(※1)。(※1)ただし、受け入れは約5%と少ない。
青丸で囲まれた赤い星はギャローデット大学のあるワシントンD.C.。 黄色で塗っている部分は、以前ブログでお話したマーサズ・ヴィンヤード島のあるマサチューセッツ州。緑色に塗られているところはコネチカット州。(黄色斜線、緑斜線、青丸、は筆者追記)https://www.abysse.co.jp/america-map/americamap/blankmap04.html 画像をクリックすると画像を拡大して見ることができます。
大学の中(建物の造り)は、手話で話しやすいように廊下が広く作られていたり、エレベーターがガラス張りで、ゴンドラの中にいるろう者と外にいるろう者とで手話で会話ができる設計になっていたりします。エレベーターや廊下の他にも、教室や寮のテーブル等も手話が見やすい形や配置になっています。その他にも大学全体が、照明や距離、色、視界、振動(音)を考慮したものになっています。この空間は「デフスペース(※2)」と呼ばれています。
授業カリキュラムは、アート、心理学、歴史学、社会学、教育学、哲学、他国の言語等も学べますが、最も特徴的なのは手話言語学、やろう者学(Deaf Studies)を学ぶことができる点です。
また、大学の周辺のお店はろう学生アルバイトが働いていたりします。
(※2)デフスペース(デフスペース・デザイン)…ろう者の感覚や独自の行動様式、ろう文化を活かした空間デザインのことです。2005年にアメリカのギャロデット大学で考案され、主に教育施設を中心に展開しています。(原文ママ)(DeafSpaceDesign Libraryより https://deafspace-library.com/ )
ギャローデット大学では、1988年にデフ・プレジデント・ナウ(DPN)(※3)という、ろう学生が起こした運動が起きています。
この運動は、アメリカで障がい者にとって最も重要な差別禁止法である「障害を持つアメリカ人法(ADA法)(※4)」の成立に大きく寄与し、ギャローデット大学は「ろう者社会(Deaf Community)」や「ろう文化(Deaf Culture)」の中心地として、聴者を中心に世界的に認識されるようになったそうです。
(※3)デフ・プレジデント・ナウ(DPN)…1988 年にギャローデット大学の学長として初めてろう者を採用することを求める運動。「聴覚障がい者の公民権運動」として評価されている。
(※4)障害を持つアメリカ人法(ADA法)…障害者差別を禁止するアメリカ合衆国の法律。1990年7月制定。(原文ママ)(コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アメリカ障害者法」の意味・わかりやすい解説より)
ギャローデット大学では、大学に入るために必要な英語力やASL(アメリカ手話)を身につけるために、外国人ろう者向けに、書記英語、ASLを学ぶ、English Learning Institute(ELI)があります。ELIのプログラム修了後、ギャローデット大学をはじめとする大学に多くの生徒が進学しているそうです。
日本のろう者もギャローデット大学に留学している人もいます。また、日本にあるろう者の通う大学である筑波技術大学では、今年ギャローデット大学で海外研修を行なったようです(https://www.tsukuba-tech.ac.jp/topics/2025/06/05001632.html)。
ギャローデット大学について気になった方、DPN運動についてもっと詳しく知りたい方は、是非下記の参考資料もご参照ください。
【参考文献】
・Gallaudet University | Changing the world with a bilingual way of being(ギャローデット大学公式サイト 英文) https://gallaudet.edu/
・『手話による教養大学の挑戦 ろう者が教え、ろう者が学ぶ』斉藤くるみ 編著、ミネルヴァ書房、2017年
・[ハートネットTV]【手話つき】アメリカ ろう・難聴者のためのギャローデット大学 (キャンパスライフ編) | NHK https://www.youtube.com/watch?v=eaV90jNLSg4
・[ハートネットTV]【手話つき】アメリカ ろう・難聴者のためのギャローデット大学 (日本人留学生編) | NHK https://www.youtube.com/watch?v=mMiW5deq5YY
・124年間学長が聴者だった、ろう者の大学で。全米を揺るがせた学生運動を描く『Deaf President Now!』 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD https://ideasforgood.jp/2025/10/07/deaf-president-now/
・米国ギャローデット大学の Deaf President Now 運動に見る「大学」と「ろう文化」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/taikaip/77/0/77_119/_pdf/-char/ja Title 米国ギャローデット大学のDeaf President Now 運動にみ …
・『哀れみはいらない: 全米障害者運動の軌跡』ジョセフ・P. シャピロ 著, 秋山 愛子 翻訳(1999/12)
・学びになった10日間:アメリカ研修体験レポート(第1回/全3回) | 筑波技術大学ウェブマガジン https://tsukumaga.com/students/202506063587.html
・米国留学 報告書(11)ギャローデット大学 https://kijikiji.com/dsp/gallaudett.htm
・ろう者たちのキャンパスライフ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

アメリカ合衆国白地図州都あり(日本語)フリーデータ より



